昭和33年(1958)当時の論理回路
現在では、半導体回路が全盛です。半導体もバイポーラといわれるトランジスタの回路は
使われなくなって、MOSの回路が大型計算機でも使われるようになってきています。
昭和33年(1958)当時の論理回路の動向はどうだったか、
私が保存しているエレクトロニクス誌(1958.9)をみてみましょう。
この表紙はパラメトロンの写真です。
論理素子の比較表です。(通研 川又さんディジタル技術の基礎より)
当時は継電器(リレー)真空管 放電管が使われていましが、速度や信頼度に難点がありました。
今後のものとして以下のものがリストされています。
・トランジスタとダイオード
トランジスタの寿命がまだ問題でした。ほぼ理想的であるが、未だ高価であり将来の開発が期待されるとコメントがあります。
これが本命になって、コンピュータの全盛時代が生まれました。
・パラメトロン
寿命は半永久的。ある程度まとまった大きな方式に好適、電源装置と素子の改良が問題とあります。
速度が上がらないこと、素子が小さくならないこと、電力を食うことなどで、半導体に押されてしまいます。
・磁心
目下開発中とあります。
IBM7070など実用になったものが少しあるくらいで、ほとんど使われませんでした。
・クライオトロン
絶対零度付近の温度にする設備が必要とあります。
一時はかなり研究開発が行われましたが、結局は実用にはなりませんでした。
トランジスタを用いたディジタル回路 電気試験所 高橋さんの論文
です。
第1図の普通のフリップフロップ回路は、富士通のF-222などのトランジスタ電子計算機に使われた回路方式です。
トランジスタによるダイナミック回路は高橋さんが、電気試験所で開発したETL Mark IV の基本回路です。
この回路は少ないトランジスタの数で計算機を作ることができる優れた方式で、1960年代に日本電気や日立の計算機に採用されました。
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パラメトロンを用いたディジタル回路 日本電気 長森さんほかの論文です。
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パラメトロンは昭和29年7月東大の後藤さんが発明した、ユニークな論理素子です。
日本で実用化研究が行われ、パラメトロンの計算機や交換機などが作られました。
磁心とコンデンサによる共振回路に共振周波数の倍の周波数で磁心をドライブすると、磁心の非線形のために0位相または
π位相の発振が起こる。この二つの位相は最初に加えた微小の入力の位相によって決まるという特性を用いた論理回路である。
この論理回路は、多数決の論理になっているとが特徴で、通常3入力の多数決回路が使われている。
このためフルアダーが4つの素子で実現できるなど、トランジスタを使った回路とは違った構成ができるようになっている。
当時は有望視されたパラメトロンでしたが、速度が上がらない、小さくならない、消費電力が大きいなどの点で、発展した
半導体に押されてしまいます。
リレーの回路の論文もありますが、富士通の池田さんほかのもので、こちらのものと大体同じです。