BTRON サブプロジェクト


キーボードなどの周辺機器の仕様設計と標準化

キーボードに関しては、今後も文章を入力する最も有効な方法として利用されると考え られ、また従来のキーボードに関する問題点が非常に大きいため、 BTRON の中でひと つの独立したテーマとして研究が進められた。その結果、トロン仕様キーボードユニッ ト(トロンキーボード)の仕様が規定された。

キーボードの仕様を決めるファクターには、大きく分けて物理的配置と論理的配置の 2 つがある。前者はキーボード全体の物理的形状を意味する。現在広く使われている従 来のキーボードは、 100 年以上前に作られた機械式タイプライタの物理形状をそのま ま受け継いでいる。これは、「人間が機械の都合に合わせる」という古い考え方をその まま引きずったものであり、人間にとっての使いやすさを本当に追求して設計されたも のではない。そのため、使いにくいだけでなく、指の動きに無理な負担がかかり、健康 上よくない要素を持っている。

これに対して、トロンキーボードでは、「どういうキーボードを使えば人間側の負担が 最も少なくなるか」を労働医学や人間医学や人間工学的見地から徹底的に追求すること により設計が行われた。具体的には、数百人の手のサイズや指の動きを実際に計測し、 指の動く範囲をトレースし、指の移動量や疲労が少なくなるように人間工学に基づいた 解析を行うという方法が用いられた。その結果、中央部の盛り上がりの傾斜角度や、キ ーのピッチなどに関しても、人間工学的に最適な値が規定された。

一方、論理的な配置というのは、キーの割当て、すなわちキーと文字や機能との対応を どうするかということである。英語を扱うコンピュータやタイプライターの場合は、 QWERTY 配列が広く普及している。一方、日本語(かな)に関しては JIS 配列が普及 しているが、 JIS 配列とはまったく異なった新 JIS 配列も規定され、それ以外に親指 シフト(ニコラ)配列もかなりのシェアを持っている。

トロンキーボードの場合、日本語については何百万文字もの文章データを解析し、シフ ト回数の減少や交互打鍵による打ちやすさの向上を考慮しながら、新規の論理的配列 (トロン配列)を規定した(図 2 )。このため、指のむだな動きを最小に抑え、入力 効果を上げることが可能である。なお、新 JIS 配列なども似たような手法で設計され たものであるが、トロン配列の場合は、シフトキーやかな漢字変換キーなど文字キー以 外の重要なキーについても考慮しているという特徴がある。一方、トロンキーボードの 英語の配列は評価の高い DVORAK 配列となっている。

図 2  トロンキーボードの日本語配列の図