親指シフトキーボードの評価 日本能率協会の実験結果で、初心者の練習時間に対する入力速度を調べたものです。 ローマ字入力、親指シフト入力、JIS入力を初心者を使って訓練したものがありま す。  「ワープロらくらく速習法」大島章嘉・銘子著 昭和60年9月日本能率協会発行 という本です。内容を少し紹介しますと(詳しくは本書を参照してください)   同じオアシスで、キーボードとして親指シフト、JIS、ローマ字の3つをワー プロ未経験者の20〜30才の女性を10名選んで、テストをしました。   個人差をなくするために、全員が2つの入力方式をおのおの4週間一日2時間ず つ行いました。   試験問題はPHPより抜粋した随筆風の比較的やさしい文書を選びました。   結果としてはこの本にはグラフが出ております。練習時間に対する入力速度を 私が今読みとって、数字で表にすると(文字/分)         10時間   20時間  30時間  40時間   親指    33     50    62    76   JIS   28     42    52    65   ローマ字  24     32    42    53   のようにローマ字の成績が一番悪いという結果がでています。   ローマ字入力は2〜3時間までは覚える文字数が少ないこともあって他の入力方 式に比べて入力速度は早いのですか、その後は向上しません。これは打鍵数が多いの と、日本語をローマ字に変換することを頭の中で行うことが、英語を使い慣れない人 にはマイナスに利いているようです。・・・とこの本には書いてあります。   また、被験者の感想もあります。ローマ字と親指シフトキーボード入力を両方や った5人の意見では   親指の利点として   ・一度で出る。   ・完全に覚えてしまえば、頻度の高い文字が真ん中にあるのでブラインドがやり    やすい。   ・覚えれば早く打てる。   ローマ字の利点としては   ・覚えるキーの数が少ない。   ・リズムがとりやすい。   親指の欠点としては   ・覚える文字が多いので、覚えるまでに時間がかかる。   ・とっつきにくい。   ・親指の動きに慣れるまでとまどいがある。   ローマ字の欠点としては   ・2回おさないと文字がでない。   ・早さは期待できない。   ・濁音や促音が打ちにくい。   結論として、5人の内4人は親指シフト派、1人がローマ字派となっています。                 〜〜〜〜〜〜〜〜                 〜〜〜〜〜〜〜〜 次のものはキーボードの速度の比較の論文として、違った観点から調査した資料です。   この論文は従来より工場などの作業の評価に用いられてきた手法でキーボード を評価したものです。 「標準時間法による入力方式別スピード比較実験」    大島章嘉 他 財団法人日本能率協会    情報処理学会 日本語文書処理専門委員会 87.3.4 1.はじめに   ワープロ・パソコンが急速な普及をみているが、各種入力方式の良否の評価につ いて、まだ充分な方法論が確立していない。上下段別頻度分布、交互打鍵率、同指連 糸率、段間連糸率、総打鍵数だけでは入力方式の良否の総合評価は難しい。このため 一般初心者ユーザーはもとより、ワープロ等にかなり精通しているはずの人でさえ、 定見を述べえない場合がすくないない。本稿はある一定の水準に習熟した人が(ブラ インドタッチ)、同一文書を作成するなら、入力時間の短い入力方式が最も望ましい との考え方に立ち、現在すでに一般に普及している、ないしは近い将来普及するとさ れている入力方式4つ(JIS、新JIS、ローマ字、親指シフト)について、一打 鍵当たりの標準時間を設定し、かつその変動要因別係数を与えることにより、入力の 良否を評価しようとするものである。・・・ 2.実験の全体フロー・・ ・所要時間変動要因の整理 ・所要時間の推定式の構築 ・推定式に必要な係数把握のための実験 ・原単位・諸係数の確定 ・推定プログラムの作成 ・同一文書の所要時間値等の推定 ・評価 3.結論   日本語の一つの典型とされる天声人語1日分約771字を手書きより若干早い速 度で(40字/分、JIS方式を前提 日商検定3級の水準ただし余裕率25%)打 つものとして、各入力方式の所要時間を推定した。その結果をグラフに示す。  グラフは棒グラフで表にすると      正味所要時間分   比率  JIS   7.81   100 新JIS   7.38    94 ローマ字  10.20   131 親指シフト  6.04    77 ・JISの入力所要時間は変換時間を除いて、移動距離時間1.67分 打鍵時間は  6.14分である。 ・新JISがJISより改善されたのは総打鍵数が増えているが、1打鍵あたりの  所要時間が小さくなっているからである。 ・ローマ字の長いのは、総打鍵数がJISに比べて1.46倍で 1打鍵あたりの所  要時間はJISにくらべ、11%早い。 ・親指シフトは総打鍵数が0.83倍 所要時間が0.94倍である。 6.推定式に必要な諸係数   10代から50代までのキーボード経験のない男女18人を選び、指の運動に対  する係数を測定した。 8.本実験の限界と課題 ・メンタルな過程は考慮していない。(ローマ字のように日本語から頭の中で変換す  るとか) ・習熟時間の長短の評価はできない。  モデルの目的から当然であるが、キー配列を覚えるための時間に差は発生するが  このモデルではブラインドタッチでどの方式も打てるものとしているので、この面  の評価は出来ない。