スペース 「時の話題」原稿      昭和56年8月24日                                    川崎市中原区上小田中1015                          富士通株式会社オフイス事業本部                           開発技術部長   神田 泰典                                          「日本語ワードプロセッサ」         2000字(40字×50行)  工場に於ける生産性の向上に比べると、オフイスにおける生産性はあまり向上していな いといわれています。しかも,企業におけるホワイトカラーの割合が増加しているため、 オフイスの合理化、別の言葉で言えば,オフイスオートメーション(OA)が経営的にも 大きな問題になっています。  日本のオフイスでは、文書は主として手書きが用いられています。紙と鉛筆で誰でも簡 単に文書がつくれます。しかし,文字を美しく書くことは大変で疲れます。また、書いた ものを大幅に修正することは困難です。公式の文書には和文タイプが使われており、きれ いで見やすいのですが,和文タイプは誰にでも使えるものではなく、専任のタイピストに 依頼しなければなりません。また、修正も困難で悪くすれば打ちなおしになります。  日本語ワードプロセッサを利用すればこれらの問題点が解決できます。日本語ワードプ ロセッサは日本語の文書を作成、編集、修正し、印刷できます。また保管できますので、 以前に作成した文書を取り出して、それを利用して新しい文書を作ることもできます。  20社近い企業がこの分野に参入しており,種々の日本語ワードプロセッサが販売され ています。55年度の出荷は業界全体で3000台程度ですが,今後飛躍的に増加するで しょう。  日本語の入力方法としては和文タイプのように漢字の文字盤から文字を1文字づつ選択 して入力するペンタッチ入力と、かなを入力して漢字に変換するかな漢字変換入力の2つ に大別されます。ペンタッチはとっつきやすいのが利点ですが,慣れても速度は50文字 /分くらいです。また漢字を1文字づつ選ぶので,原稿を見て入力するのなら良いのです が考えながら入力するのには向きません。かな漢字変換は、キーボードに慣れる必要があ りますが、慣れると文章を考えながら入力することができます。また速度も早く手書き( 30文字/分)の2倍から4倍に達します。  OASYS 100/100J  富士通では昨年5月かな漢字変換方式の日本語ワードプロセッサOASYS 100 を発表しま した。装置はフロッピイディスク2台とディスプレイのついている本体部とキーボード部 とプリンタ部よりなります。文書80頁を記憶できる文書フロッピイとかな漢字変換用の 10万語の単語辞書を収容した辞書フロッピイがセットされます。ディスプレイには1行 に48文字の漢字を32行(1536文字)表示でき、このディスプレイを見ながら文章 を作成します。キーボードは英文タイプに類似のものですが、日本語の文章の入力に便利 なように特別に工夫した「親指シフトキーボード」を使用しており、少しの練習でキーボ ードを見ないでかなが入力できるようになります。プリンタはドット方式のプリンタで、 漢字を24×24または16×16の点の集合で印刷します。  かな漢字変換はディスプレイ画面を見ながら行います。かなを入力した後、「変換キー 」を押すと辞書からそのかなに対応する単語が選択され表示されます。辞書には一般の単 語が6万語、姓名、地名などの固有名詞が2万語収容されており,そのほかにユーザーが 2万語追加登録することができます。日本語には使用、仕様、私用のように発音が同じで 文字の違う単語がありますがこれらの選択は入力するときに行います。しかし、一度選択 すると辞書の順番の先頭にきますので、次にはそれが最初にでるようになっています。  OASYS 100 では入力のほかに、英文ワードプロセッサのように文書の訂正や編集の機能 がありますので,大きな画面を見ながら文書の加工ができます。作成した文書はプリンタ で印刷でき、対外的な文書としても使用できます。また、文書はフロッピイに保管してお くことができ,後で取り出して利用することができます。このOASYS 100 は卓上型で、価 格は320万円です。発売以来好評で、56年6月で1500台の受注がありました。  また、8月には普及機種としてOASYS 100Jを発売しました。OASYS 100Jは非常にコンパ クトで、また価格も159万円と市販の日本語ワードプロセッサの最低の価格となってい ます。便利で欲しいけれども価格が高いという人が多かったので、価格が下がれば普及に も拍車がかかるでしょう。将来は英文タイプのようにオフイスで一般の人が一人一台ずつ 利用するようになるでしょう。                                                                            以上