ワープロの今後のこと              神田 泰典  日本語ワードプロセッサ、略してワープロ が一般に知られるようになってきた。ワープ ロはカナのキーボードと日本語が写るテレビ 画面とで構成される一見パソコンと同じかっ こうをしている機械である。日本語の文章を カナで入力して、ワープロに持っている辞書 の助けにより、漢字に変換しながら、正しい カナ漢字まじり文の日本語の文章が書ける仕 組みになっている。  和文タイプライタを連想しがちであるが、 本質は全然違う。和文タイプライタは専門家 が原稿を清書する機械であるが、ワープロは 一般の人が紙と鉛筆で文章を書いたり、考え たりするのをもっと能率よく行なうことがで きる機械である。  ワープロが普及するにつれて、実態が理解 されてブームになってきたが、ゆくゆくは紙 と鉛筆の代わりに使われるようになり、第二 の筆記用具になるだろう。  日本人は日本語を漢字とカナまじりで表記 している。これは世界に誇るべき実にすぐれ た手法である。漢字は学ぶには時間のかかる 大変なものであるが、習得すれば文章の内容 を能率よく読むことができる。  よく考えてみると、漢字は読むためのもの で、書くためのものではないようだ。書くた めなら、中国での試みのようにもっと徹底し て漢字の省略化、記号化を計った方が良い。 しかし、それでは漢字の持つ良さがなくなっ てしまう。つまり、漢字は書けなくても、読 めればそれで良いのではないか、それを実現 するのがワープロなのである。  私はこのワープロを開発しており、ワープ ロを使いだしてからもう5年になる。もちろ んこの文章も自宅でラジオを聞きながらワー プロで作っている。いったん使うとその便利 さのためにもう止めることができない。会社 でも自分の専用のワープロを横に置いて、仕 事はすべてワープロでやっている。手紙や資 料、企画書などを作るにはこんな便利なもの はない。  現在、ワープロを使用している人のなかに は、著名な大学教授やシナリオライターや作 家の方がおられるし、企業でも管理職の人が 使っている例が多いのは、ワープロが知的作 業の良きパートナーとなるからである。  そろばんが電卓に置き換わったのは、つい この間のことである。今度はこれが、筆記用 具に波及するのである。これは、漢字の渡来 に次ぐエポックである。  文字は手書きであればこそ、貴いという思 想もあろう。確かに私信は手書きの方が良い。 しかし、新聞記者がいくら手書きで原稿を書 いたとて、その原稿は早速オペレータによっ てコンピュータに入力され、写植システムに よって紙面が作られている。小説などの出版 物においてもしかりである。  誰も信じないかも知れないが、将来学校で は生徒が1台ずつワープロをもっていて、そ れで、ノートを取るようになるだろう。  ワープロによって漢字が書けるから、生徒 は漢字を読めればよい。書き取りは昔がたり になる。  試験の答案もワープロで作るから、先生は 採点をコンピュータで行うことができる。 現在のマークシートのような無茶なシステム は、ワープロの利用によりなくなる。  テクノロジーの進歩により、知的なロボッ トとしてコンピュータを利用できる可能性が でてきた。しかし、コンピュータは人語を解 せず、文字も読めない。しかしワープロを使 えば、コンピュータに人間の意志を伝えるこ とができ、人間のために働かせることができ る。  学校教育の段階から、筆記用具としてワー プロが使えるようになっていれば、社会に出 て、そのころは職場で使われているであろう コンピュータを利用した知的な作業を援助す る機械も、容易に使いこなすことができるよ うになるだろうと思う。           (かんだ やすのり)